2014年4月19日土曜日

坂戸淳夫「死におくればんざいはまた、死のかたち」・・・


少し雑誌の整理をしていたら、「夢幻航海」(夢幻航海社・平成22年2月3日刊))第71号「坂戸淳夫抄」に手が止まった。
この号はすべてが、坂戸淳夫追悼号として臨時に発行され献じられている。
坂戸淳夫はこの年(平成22年)1月3日に亡くなった。享年85。わずか一か月の短期間後に約60ページの冊子として献じられているのだ。
「夢幻航海」誌は、最初は福田葉子によって刊行されていたと記憶しているが(あるいは共同発行だったか・・)、途中より岩片仁次が継続して発行し続けている。通常号は高柳重信『散文集成』や高柳重信関係の資料を掲載し続けている雑誌だ。
高柳重信自身よりも高柳重信のことをよく知っているという岩片仁次であるが(彼には『重信表』という詳細を極めた年譜がある)、それだけの労力のみでも驚嘆するが、それだけではない。
そのすべての刊行書の文字入力、印字を自らで行い、それをコピーし製本をして届け続けている。
ごく少部数ながら『高柳重信全集成』は全30冊にもおよんでいる。
『高柳重信全集成』の最初の刊行が平成7年7月8日、最後が平成18年3月31日だから10年以上の歳月をかけての仕事ということになる。こうした彼のすべての膂力を傾注しての仕事には、ただ、ただ、頭を垂れるのみである。
ところで、本号の「坂戸淳夫抄」には、これまでに「上梓された各句集よりそれぞれ三十五句、前略句集というべき『年少集』及び『彼方へ』以降については各十五句を抄録した」(編集後記)、総数約310句が収められている。

             木犀やけさ来し手紙ふところに      淳夫『冬樹』
             
             夜はよるのことば 応へぬ子と話す
             朝はまた骨をつないで起ち上る
              
*句集『冬樹』は、坂戸淳夫の長男の名、中学2年のおり、「脳外科手術によって、一時回復したものの死の二週間前には言語障害を起こし、食物も喉を通らなくなった。/それ以後の冬樹との対話は、僕や妻が彼の手を握り、僕たちの呼びかけに応えて彼が手を握り返す、これが唯一のものとなった。この単純な行為によって、彼の意志や要求は僕たちに伝達され、手足をさすったり、果汁を作ったりもした。その果汁も、数滴とは口に入らなかったけれど、僕も妻も、目を覚ましている限りはきっとその手を握り、何ごとかを話しかけずにはいられなかった。冬樹の存在を確かめ、元気づけることと、僕たち自身へのいいなだめのためにも。/そのときほど、僕は、僕自身の持っている言葉の貧しさを思い知らされたことはない。僕はいったい、彼のための祈りの言葉、病気への呪いの言葉を、どれほど所有していたというのであろう。そして、その言葉の効用を、いったいどれほど信じていたであろう。このときほど、僕は呪術師の言葉を天来の声として信じ切ることができた古代人が羨ましかったことはない。、と同時に、言葉をもぎとられるということの悲惨さを、これほどまでに思い知らされたことはない(中略)/このとき以降、僕は言語不信に陥ってしまったようだ。己の思いを言葉に移し、書きとるその瞬間、まったく信じていない自分の影を見た。冬樹を失った悲しみを、なまじいな言葉によって書くことなど、まったく自己をいつわるものでしかあり得なかった。/かくて沈黙の数ヵ月を過ごしたが、僕はまた俳句に己の心の拠りどころを求めることになった。いまのところ、僕には、たとえ不完全であっても、思い託すものは俳句しかなかったからである。そのとき僕は、冬樹のために句集を編むことを思い立った」(句集『冬樹』あとがき)。

             長し昭和むかし麦稈真田帽
                折笠美秋氏へ
             見せたやな辛夷が菫が咲き候よ
                追悼・高柳重信
             沖に船こころに弔旗たたみけり
             今は昔十九の夏の爆死の友よ
                折笠美秋追悼
            黄泉にて語るそは「言霊の金剛」なれ
            蟲の闇異端の蟲のこゑもして
            爆死の友の五十年忌の淡あぢさゐ
            窓押し開き招き入れるは夜と霧
  
            ヒロシマ忌先制攻撃症候群厳存す
                平成の市町村大合併
            さるどしの除夜鬼無里といふ村が消えた
             
            国敗れ餓死せし者も英霊たり
             
            
                  ハナミズキ↓

        
              
      



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