2014年5月3日土曜日

田中淑恵「ミニチュアブックのなかの物語」・・・


小さな本のパイオニアと称する田中淑恵の手製の本の個展が、三省堂本店第二アネックスビル4Fの古書店の一角で行われている(~5月10日(土)まで)。
彼女の装幀によって句集を出された俳人も少なからずおられるのではないだろうか。
その感性は手作り「豆本」に遺憾なく発揮されている。
自著のミニ本『鳥のうたった歌』も愛し気に希望を歌った詩編である。

個展にはさまざまなミニチュア本、例えば、ビアズリー、A・A・ミラン、広津里香、結城信一、紫式部、川本三郎などがあったが、とりわけ愚生は、30歳で夭折した大手拓次に魅せられたことがあるせいか、拓次のものに興味をもった。さすがに拓次の「藍色の蟇」(写真下)の薔薇賛歌の連祷詩編にちなんで薔薇を装幀に生かしたのに魅かれた。


そういえば、高柳重信もおおいに薔薇連祷の一連には影響されている。

    しづかに
    しづかに
    耳朶色の
    怒りの花よ           重信


は、あきらかに拓次の「耳朶色の薔薇の花」のフレーズが生かされている。その拓次が象徴主義について「象徴詩は生活の象徴である。折にふれ汝の胸にある生の面影が出るのである。/詩人自身の個性の映像であり、人生の映像である。/現実を捨てるときはロマンチシズムとなり、現実をすて得ないからこそ、象徴の文学が生まれるのである。飽くまでも現実の上に立ち、その苦しみをのがれんとして夢見るとき、二者のとけ合った幻が生ず」と記しているのはいまだに忘れがたい。

                                           ハナズオウ↑
















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