2014年8月14日木曜日

田沼泰彦『断片・天国と地獄の結婚』・・・



久しぶりに造本の見事な詩句集に出逢った。
田沼泰彦『断片・天国お地獄の結婚』(下井草書房。限定八十八部・第一~八番は著者用)である。黒の帙入り(写真では黒がうまく写らなかった)、書題は銀の箔押し。表紙は耳付き和紙(奥付に表紙 鷹野禎三とある)。
ページ数は付されておらず、多行(三行)の句篇は地獄Ⅰ~Ⅹ、詩編は天国Ⅰ~Ⅹの各章だてになっている。
例えば、詩編の天国Ⅰは(『煉獄無線』より)、天国Ⅱには(『異母郷行』より、『ある碑伝』より、『冥婚の村』より)からなる。こうして、それぞれの趣向がⅩ章ある。
句篇は地獄Ⅴのみは一行の句が20句収めた章があるのみで、あとは三行の句が各章ごとに各15句ほどこされている。
この一行句のみは20句すべてに「はは」が詠みこまれ、平仮名であり、他は漢字、片仮名表記である。例えば、

     素手デ掘ルははノ墓穴雨干潟       
     生煮エノ独活生温キははノ帯
     聞カセテヨオレノ産声テフヨははヨ 

ついでと言っては失礼だが、三行表記の句をいくつか挙げておきたい。

     霊喚ばむ
    火の見やぐらの
    鐘おぼろ                地獄Ⅰ

     神饌の
    山羊を屠るは
    神無月                   地獄Ⅱ

     能面の
    めをとめしひか
    瞑目か                                  地獄Ⅲ

     仏壇の
    無花果
    誰の歯形残し             地獄Ⅳ

詩編の天国Ⅰの冒頭は以下のように始まる。

   こちらは防災オハナバタケです
                      小学校よりお知らせします
                                      地域の皆さん
   いつも私たちを見守っていただき
                       ありがとうございます
                                   これからも私たちの見守りを
   よろしくお願いします (以下略)

最後の天国Ⅹの最後の三行は、

   発見サレタトキノ 着衣ハ シロイ ネマキ シロイ オビ アカイ ハダジュバン
   ハダシデ ヒライタ クロイ コウモリ ガサヲ テニ シテ イマシタ 
   ヤマダサン二 ココロアタリノカタハ ケイサツショマデ れんらくをクダサイ・・・
                                                  畢
  
これらを読み解くには、愚生ではおぼつかず、いささか時間を要すようだが、その片々なりとも皆さんに伝えたくてアップした次第・・・しかし、句は少なくとも、その言語の彫鏤ぶりに俳詩人としての矜持をみるおもいだった。



*閑話休題・・
午後から雨が降ると予報されていたが、基調は曇りだと思い込んで、散歩のつもりで、府中市郷土の森博物館に行った。府中市民は特別に入場料は半額の100円。晴れていれば一日植物類を眺めていることも可能だ(プラネタリウムは休みだった)。府中市生まれの現代詩人として村野四郎の記念館もある(無料)。古い民家なども移築されている。
花の時期としてはコスモスと萩が少し咲だしているくらいだった。午後二時過ぎには雨が降り出して傘も忘れてしまったので、結局濡れ鼠・・・。



    

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