2014年9月4日木曜日

齋藤愼爾編『俳句殺人事件 巻頭句の女』・・・



齋藤愼爾編『俳句殺人事件』(2001年、光文社文庫)は12編のミステリーを収めた文庫本のアンソロジーだ。この文庫を、久しぶりに手に取ったのにはわけがある。
今や、図書館で読める本はすべて処分するように!という山の神の命令が昨年秋あたりから、下り続けているので、それを実現にするに、強制執行されているのである。
愚生のように蔵書らしい蔵書もなく、稀覯本など収集する趣味も持ち合わせていない輩ですら、こうだから、「豈」の事務局長・酒巻英一郎殿は、改築した書庫にも収まりきらず、ついに離れにも蔵書が侵食しつくして、こちらも山の神から、もう先も長くないので、すべてを片付けてからあの世とやらへ行ってほしいと言われているらしい。それでも、きっと隠れて数えきれないホンコちゃんを住まわせ続けているにちがいないのだが、さすが引導を渡しはじめたらしく、先ずは知人や若い俳人など目当てものがあったら、どうぞ家に来てお持ち帰り下さいという、あるホンコさんを望んでいる者にとっては、垂涎の行為に及んでいるらしい。
ともあれ、本文庫に収められているミステリーは12編、題名と作者を挙げておくと、

・「巻頭句の女」松本清張、・「句会の短冊」戸板康二、・「さかしまに」五木寛之、
・「紺の彼方」結城昌治、・「紙の扉」佐野洋、・「恋路吟行」泡坂妻夫、・「虻は一匹なり」笹沢佐保、
・「殺すとは知らで肥えたり」高橋義夫、・「旅の笈」新宮正春、・囀りのしばらく前後なかりけり」塚本邦雄、・「目をとぢて・・・・・」中井英夫、・「死の肖像」勝目梓。解説はもちろん齋藤愼爾。

その解説に、

この文庫にはユニークな仕掛け(トリック)がある。偶数ページ下段に横組で夏目漱石から対馬康子、黛まどかまでの「現代名句」が象嵌されている。読者は推理小説の珠玉を読了したあと、もう一度、名句味読の愉悦にひたれる。「推理小説」プラス「現代名句辞典」。それが本書だ。これは絶対に買いである。是非とも座右に置いていただきたい。

とある。愚生はこれまで、その言を守り、座右に置いてきたが、無念だが、どうやらお別れの時が来たようだ。いずれにしてあの世までは持って行けないのだから、お許しあれ。全部の句を挙げるのは無理があるから、「豈」同人(冥界同人をふくむ)の収録された俳句作品のみを以下に挙げておく。

    女狐に賜はる位扇かな         筑紫磐井
    国境が蛇の衣なら一列に        堀本 吟
    露地裏を夜汽車と思ふ金魚かな    攝津幸彦
    じゃんけんで負けて螢に生まれたの  池田澄子
    春愁の血は睡れずに佇っている    大井恒行



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