2015年4月1日水曜日

高橋龍「秘密保護法卵食ふときマスクとる」(「鹿首」7号)・・・



いまどき、高橋龍ほどいかがわしく、危うく句をなす俳人は見当たらないように思う。多くはパロディーなのだが、そのあざとさも皮肉も嫌味にはならない。

  山烏の尾のプルトニウム二三九       龍  
  さまざまなこと忘れゆく柳かな
  男九穴女十穴滴らす
  銀河鉄道女性専用車に菊慈童
  木枯や遺骨の還るところなし
  紫の袱紗のなかは核兵器

これら30句を「鹿首」7号(鹿首発行所)に招待作品として発表している。「鹿首」今号には他にも興味を引く稿があって、特集「壊れる」の高柳蕗子の潰れたトマトから書き起こして、茂吉の〈「腐れトマト」がつけた先鞭は、「トマト」を歌語に昇格させた。その歌語を無意識に“みんな”で詠み重ねたら、今や「トマト」は、命が煮溶ける文明まで表せるようになった〉とあるのには、短歌にその詩形の歴史が厳然とあるように思えた。あるいは、特別寄稿の堀切直人「みさとリハビリ病院で出会った人々」も面白く読んだ。



            「早大俳句研究会」の吟行で折笠美秋(左は奥名房子)↑
              3月17日は、折笠美秋忌。

話を高橋龍に戻すと、「面」118号にも作品とエッセイ「暇な話」を書いている。
また、特記しておきたいのは、大岡頌司追善句が同人やゆかりの人たちで捧げられている。
大岡頌司忌は2月15日。そしてまた、三橋孝子の同人への参加であろう。

      献・岩片醤油舎
  頌司/薨じて/麺を醸す/ほとけかな         岩片仁次
  擬宝珠の/花の井戸浚へ/大岡門           酒巻英一郎
  大岡頌司志圖(ランド)に遊んで日が暮れて       阿部鬼九男
  火焔酒を置き蒲生野に対座すや             安井浩司
  
ついでと言っては恐縮だが、いとわず以下に「面」龍氏を除く各同人一人一句を挙げておこう。

  楕円(ながまる)の中にⅠ書き草生やす          高橋 龍
  引き返す鷹も見られて伊良湖崎 

  小道具の雪降る戦後七十年               三橋孝子
  月光風鬼/草木塔を/過(よ)ぎる/逃散      上田玄
  Tシャツにモンロウの棲む更衣              奥名房子
  風花や父は道化の襟を着け               網野月を
  寒卵カ行ま白き一と並び                 本多和子
  ドコデモドアアケマシテ日本丸              田口鷹生
  片仮名で書くフクシマの寒さかな            加茂達彌
  空叩く紙風船に空の音                  吉田香津代
  此処は五階ひかる彼処は春の泥            池田澄子
  明けやらぬ門灯の雪手で払う              北上正枝
  たたみつつ弔辞は読まれ花の昼            宮路久子
  いなびかり父も柱も傾きぬ                遠山陽子
  ぐるこさみんこんどろいちん日向ぼこ         小林幹彦
  三下は台詞ひとこと目借時               山本鬼之介
  頭蓋とは蓋になる骨曼珠沙華              北川美美
  外灯に雪降つてゐるラブホテル             岡田一夫
  末枯は真っ赤な闇を抱いており             渋川京子
  朧朧とて後昭和九十年                  福田葉子
  初午の雨細くして朱の鳥居               黒川俊郎
  雛飾り雛を残して逝く日あり               衣斐ちづ子


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