2015年7月22日水曜日

松本邦吉「涼しさの星より星の生まれけん」(『しずかな人 春の海』)・・・



松本邦吉『しずかな人 春の海』(思潮社)。
もともとが詩人の松本邦吉だから、詩編の載っているのは違和感がない。ただ本著には句篇ともいうべき「春の海」も収められている。それも四季の配列をもって(しかも旧かな使い)。
帯には「二つの詩型の宇宙を自在に行き交い、新しい〈詩〉のありかを手探りする」とあったので、当面はその手探りを見続けていくしかない。
愚生は、俳句以外をよく知らないせいか、その俳句作品の語り得ない何かの部分を詩篇に見てしまうのだった。
それとあと一つ蛇足かもしれないが、二つの詩型は、韻文という同一ジャンルなのだと思ってみると、そこに差異を認めずに読むことができるのである。
なかでも最終篇の「手紙」には感銘した。最初の四行は魅力的かつ短律の俳句のようでもあった。

         手紙


   
    
     の                  光  の
           真空  の

    海

     きこえていない 音楽に(以下略)


句はいくつかを挙げておこう。

   マグニチュード9・0 木瓜まくれなゐ        邦吉
   ふくろふもふくろふの子も真白なり
   櫂あげて吹かるるままに花の下
   この色にはじまる世界唐辛子

そういえば、遠い昔、著書松本邦吉『星の巣』の発行所である書紀書林(1980年)は、確か、稲川方人、平出隆、荒川洋治などが出していた雑誌「書紀」があったのではなかったろうか(明白に覚えてはいないが)。
愚生の勤めていた吉祥寺駅ビルの書店の詩歌コーナーに置いたような気がする。




                                サルスベリ↑

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