2015年10月5日月曜日

妹尾健「風間直得(かざまなおえ)のこと」(「逸」第36号)・・・



「逸」第36号に、妹尾健は地味ながら貴重な資料を掘り起こし、論評している。ルビ付き俳句の実践についての歴史的な経緯についての言及である。
ルビ付き俳句の提唱は、歴史的には昭和初年にさかのぼる。それは河東碧梧桐の新傾向俳句以後のことになるが、碧梧桐は、関東大震災直後に「三昧」を発足させ、自作を短詩と称して、俳句の新天地を開拓しようとする。「三昧」の編集者であった風間直得のルビ付き俳句の提唱に乗って、実践をもしたのである。
当時、ルビ付き俳句の典型と言われたらしい作は(村山故郷『昭和俳壇史』によると)、カッコ内( )がルビ、

    簗落(オチ)の奥降らバ鮎(コ)はこの尾鰭(オゴ)る     河東碧梧桐
    (クユラス)マダム頬色(ツヤ)ない壁に雨とし今夜    阿部木実男
    低く家(ヤ)灯ぐらィ、いそ夜業(イソシ)めれ、二十娘(ハタチゴ)が髪(タリ)  原鈴華
    西風(ハヤテ)凪ゲ夕(ユ)シ浴後(ヨゴ)の麦笛(フエ)をの、吹き捨(ツク)たる 風間直得

新興俳句が勃興する前のことである。その発案推進派の中心にいて、現在は,風間直得の名は忘れ去られている。その直徳の来歴と『風間直得六百句選』(昭和7年)を手に、妹尾健は掘り起こしている。そして、以下のように述べるのである。

風間直得のルビ俳句なるものは、新傾向自由律から発した定型否定論の極北をゆく理論作品であったたといえる。   

いつもながら、妹尾健の粘り強い探索に敬意を表したい。

その「逸」(発行・花森こま)であるが今号で終刊となる。ちなみに終刊号の招待作品には伊丹三樹彦、八上桐子、参加作品に野口裕、杉山あけみ、松浦敬親、小谷小百合、石原明、木戸葉三、小西瞬夏、佐藤榮市、小島ノブヨシ、武邑くしひ、山口可久実など。注目は楢崎進弘の三百句一挙掲載。また、秋川久紫の和田悟朗論。花森こまは題詠。

      悼・愛犬ハンス、十五歳五ヶ月
  踝のあたりはももいろの闇か         こま



                    チカラシバ↑
                 
     

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