2016年4月15日金曜日

夏石番矢『夢のソンダージュ』(沖積舎)・・・



愚生は、まず、「ソンダージュ」とは、何のことだろうと思う。
「あとがき」に説明があった。

 先端に鉛の重りを付けた綱を深海に下ろす測定作業をフランス語で、「sondage
」(ソンダージュ)と言い、私の夢の記録方法がこれと似ている。日本語では「測船」。私の夢には、故郷、兵庫県相生市の生家や実家、東京杉並区で借りたアパートなどの家がよく登場する。わたしのペン先によって、何が測定されているのだろうか。

本書に記録された最初の夢は、「夢1 2002年5月23日午前」、最後は、「夢200 2015年10月24日午前」。この200編の夢の記述の解説者は、神山睦美「誘惑するサタン」と山田耕司「文体の網が漁(すなど)るものは」の2名。神山睦美はその結びに、

 夏石に俳句表現とは、イエスのいう「神の口から出る一つ一つの言葉」なのだ。その言葉を発するに当たって、試練をあたえる「父」と誘惑する「母」あるいは「妻」とが、どれほど重要な役を果たしているかは、言うにおよばないのである。

と記している。また、山田耕司は、

 あるいは、現代詩でも俳句でも、あるいはいかなる既存の文芸形態でもなく、新鮮な驚きに満ちた表現形態への強い希求。与えられたものには「私の欲しいものは何一つない」とする心のありよう。それらこそ、文体の網を間主観の海へ深くおろし、夢の数々をすなどる動機であった、ともいえようか。

と述べる。確かに詩的なよそおいはあるが、決して現代詩風ではない。夢?だから当然のように現実の断片が風景に登場することもある。例えば「夢48 2006年2月15日午前」には、私が書いた中上健次論の初校/創刊雑誌の20ページから始まる」 や、「夢4 2006年1月14日午前」には、

  学生時代によく通った
  参宮橋にあった
  Sさんの六畳一間のアパート
  Sさんは留守
  机の上に手書きメモ
  畳には新聞が開かれたまま
  Sさんの記事が死亡記事欄にある
  読むと死亡記事ではなく
  Sさんの本の紹介記事
  音楽の本
  そこに私の文章が引用してある
  Sさんのその本は
  その部屋にはない
  蔵書家だったSさんの本棚
  本は少ない
  窓は開いている
  木の葉がざわめいている
  夜
  Sさんは絶対に戻ってこない
  もう帰ろうと思う 

愚生は、ふと思う。Sさんとは澤好摩さんではないかと・・・。確か参宮橋に住まいがあった。
約40年前の愚生も、「未定」創刊同人にして編集長だった夏石番矢もよく通った。



2 件のコメント:

  1. ご指摘通り、澤さんですね。この記事アップありがとうございました。澤さんの死亡記事を夢で見たとは書けないのでイニシャルにしました。あのアパートのあった一帯はいま、大きなビルが建っています。諸行無常・・・・・・

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  2. お便り有難うございました。あれもこれも随分と年月が経ってしまいました。
                         大井 拝

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