2016年4月2日土曜日

齋藤愼爾「露無辺ひとに遠流に似た訣れ」(『俳誌総覧』2016年版)・・・



齋藤愼爾は『俳誌総覧・2016年版』(東京四季出版)の「年代別秀句評」に言う。

 時代の生み出す矛盾、その根源を問うことこそ文学=俳句のかかえる必然の課題であろう。奇しくも今年は夏目漱石没後百年目にあたる。漱石が「坊ちゃん」発表の半年後、鈴木三重吉に宛てた書簡で書いたことは、私のひそかなる座右の銘でもある。
 〈命のやりとりをする様な、維新の志士の如き烈しい精神で、文学をやって見たい〉。

その他「俳誌回顧2015」の筑紫磐井・中西夕紀・田島健一の鼎談の内容は、事前のアンケート(①2015年の印象的な出来事、②注目の結社誌・同人誌三誌、③結社誌・同人誌における注目の評論・企画など三篇、④結社誌・同人誌における気になる10句)を持ち寄っての討議で、他社の年鑑にはみられない、俳壇を展望するには内容の濃いものであった。
鼎談三者の時代の状況認識の違いもそれぞれに覗えて面白かったし、また、次代を担う若い俳人にスポットを当てた田島健一の発言も光っていた。
以下に鼎談三者があげた気になる10句からいくつか挙げてみよう。

 アベ政治を許さない           金子兜太・澤地久枝?(件の会会場)
 またの世も師を追ふ秋の螢かな      三森鉄治(「郭公⑫」)
 三月の風よ集まれ釘に疵       大本義幸(「俳句新空間」4)
 神々は寡黙なりけり雲の峰      山中多美子(「円座」⑩)
 しづけさのつれづれに蘆混み合へり     瀧澤和治(「今」⑩)
 長き夜や明りを消してわれ消して    桑原三郎(「犀」202)
 うららかに暮らした跡のあるほとり   鴇田智哉(「オルガン」1)
 うるほへる下くちびるとアニメの火   佐藤文香(「クプラス」2)
 さえずりの空をつくりし会社かな     こしのゆみこ(「豆の木」19)
 


                                       ハナニラ↑

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