2016年5月23日月曜日

上田貴美子「祈らねば無機質の帯冬銀河」(『暦還り』)・・・



句集名『暦還り』(角川書店)の由来の句は、

  暦還りして二十年桜餅      貴美子

昭和51年「万蕾」(主宰・殿村菟絲子)に入会とあるから、句歴も長い。第三句集だという。現在は「街」同人。というわけで帯文は今井聖、

  しやぼん玉祈つて歌つて無信仰   貴美子

ここに上田貴美子という裸の存在がある。
自分自身に向けられる虚飾の無い凝視。
そこから薫ってくる知性と含羞。
これが俳諧でなくて何だろう。

と記している。また、著者「あとがき」には「暦還り」について以下のように述べて、俳句との関わり合いを吐露している。

私は予てから六十歳で迎える「還暦」は¨暦を還す¨ことと考え、それから一年一年若返っていく事と思い込むことにしてまいりました。
 子離れの為に始めた俳句でしたが、いつしか¨俳句いのち¨になり生き甲斐となって居りました。

上田貴美子、昭和5年、東京生まれ。

以下にいくつかの句を挙げておこう。

  
   曼珠沙華どこに坐しても母隣
   向日葵に鬱といふ字のやうな蕊
   夭折も長寿もひと世雪しまく
   励ましのならぬ病や菱の花
   十年も金魚のゐない金魚玉
   人声が人の形に夏の霧
   秋の滝何纏ひても透きとほる
   祈らねば無機質の帯冬銀河
   


                 
                 シャリンバイ↑

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