2016年5月7日土曜日

丑丸敬史「鷺舞のそつと踏み抜く鼠穴」(「垂人」27)・・・



「垂人(たると)」は、元をただせば「風谷(ふうこく)・飛沓舎(ひとうしゃ)」という牧冬流編集に端を発した雑誌である。2001年4月に発行され同人参加を一年更新制にして、辞めたい人が楽に辞められるようにしたという。誌名もその都度変っていた。そして、4年後に同人制も会員制もとらないと表明して中西ひろ美が単独で編集・発行をするようになった。現在は中西ひろ美・広瀬ちえみの二名で編集・発行が続いている。
このあたりの移行については今号の「とびら」に詳しく記されている。

「垂人」の誌名はまだ変えたくなっていません。仲間たちと一緒に吟行をして、旅をして、連句をして、これからもたくさんの人や土地と出会って、「垂人」がいつか終わるその日まで、ぞんぶんに楽しみたいと思っております。ことわっておきますが、一度でも吟行・句会・連句を共にした方は皆さん仲間ですからね。

巻尾には、2016年現在まで15年間に行われた吟行・句会全記録として、日時と場所、参集人が掲載されている。愚生も2、3回参集しているらしいから仲間だ。
このブログタイトルにしたのは「鷺むかし」と題して、牛丸敬史の句「鷺舞のそつと踏み抜く鼠穴」を「こんな句を見た」と書き出し、句を素材にして物語り風のエッセイを鈴木純一が綴っているから。
ほかに「鵙むかし」は「荒鵙や天のはしりに酒そそぐ」、「桔梗むかし」は「天動のかたへに咲けるさはぎきやう」のいずれも牛丸敬史句に想を得ているが、その語り文がどこか稲垣足穂の「星と月のお話し」を思わせるユーモアとペーソスがある。ショート、ショートの名手現れるというところか。
ともあれ、「垂人」一人一句を以下に・・・

   悲しみをとづれば光る月夜茸          かも
   糸のやうな芽を出し葱の最初かな       中西ひろ美
   清白に芹のみの粥さう伝ふ           渡辺信明
   いいからいいから大事な大豆だいじょうぶ  髙橋かづき
   天高し政宗公の前へジャズ
        ペデストリアン・デッキ月かも     鈴木純一
   今朝のタバコのむつかしい味がする     中内火星
   ジャムを煮る夜の静寂の舟になり       広瀬ちえみ
   朝ごとに鏡は僕をもみ消すの冬        佐藤榮市
   山見えてすみれが見えて人に会ふ      安達みなみ
   鰯雲スピンかからぬコイントス         野口 裕
   からくりは真冬の霧が去ったのち       大沢 然
     



   

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