2016年10月24日月曜日

森澤程「猫のそば縮んで我も秋の影」(『プレイ・オブ・カラー』)・・



森澤程第二句集『プレイ・オブ・カラー』(ふらんす堂)の懇切極まりない花谷清序文には、

  森澤程さんの俳句は、型に嵌まっていず、類型に没していないとかねてから考えてきた。今回句稿を拝見して、この判断を再確認した。具象的な作品には象徴が、抽象的な作品には写実が、言外にひろがる豊かさが感知できる。身辺の物と現象の中から、隠れた均衡や揺らぎを取り出し、作品に純化させる自在さがある。鈴木六林男のひそみに倣えば、句集『プレイ・オブ・カラー』は「森澤程流(・)の俳句作法、すなわち、個性ある作家としての独自な方法を確立した著者の記念碑といえよう。

と記されている。たぶん、これ以上の賛辞はあるまい。残されているのは、笑いの幸福という俳句の滑稽さのみかも知れない。この問いは、存在の深いところから発せられているはずである。
また、本句集は、

 最後に、昨年、二月二十三日に永眠された和田悟朗先生に『プレイ・オブ・カラー』上梓の報告をいたしたいと存じます。(「あとがき」)

と、献じられてもいる。泉下の和田悟朗は微笑んでいるに違いない。
ともあれ、愚生の好みで、いくつかの句を挙げておきたい。

    どうしても地球は動く落とし文       
    ガラス戸に大和は暮れぬ青朱欒
    人絶え間なく山桜から出てくる
    夢はじめ翡翠が魚を呑むほとり
    真夜中の方から来たり錦鯉
    白馬の血流静かなる野分
    漆黒の水搔きに夢混む白鳥
    鬼やらい火の影つねに動きおり

森澤程、1950年、佐久市生まれ。


                  ホトトギス↑

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