2016年10月3日月曜日

和田耕三郎「水呑めば吾れもまた闇節子の忌」(『椿、椿』)・・・



和田耕三郎『椿、椿』(ふらんす堂)は、節子の忌であふれている。節子とは、もちろん彼の師である野沢節子である。その節子の闇の句といえば、

   はじめての雪闇に降り闇にやむ      節子

の句である。1995年4月9日75歳で没している。おのずとタイトルに挙げた和田耕三郎の句「水呑めば吾もまた闇節子の忌」にたどりついた。野沢節子は生涯を闘病ととも送った。本句集「あとがき」は、実にシンプルだが、

 脳腫瘍の手術を受け、右半身と言語の障害を持つようになって十年が過ぎた。前の句集『青空』以後も俳句を作り続け、同人誌「OPUS」はまもなく50号を迎える。  

   これからも俳句とともに。

としたためられている。思えば好青年だった和田耕三郎は愚生よりはるかに若いと思っていたのだが、生れは昭和29年、愚生より6歳下だったのだ。この年齢になってみると、さして違わないような気もするし、いやいや、まだまだ彼には将来の有る身とも思えてくる。
ともあれ、節子忌の句からいくつかを以下に挙げておこう。

   黒髪に落花一片節子の忌      耕三郎
   節子の忌さくらひたすら仰ぎをり
   節子のさくらつねこのさくら月細し
   冬ざくら節子つねこと亡くなりて
   コーヒーの黒く澄みたる節子の忌
   節子忌の空いつぱいに空があり
   船笛のかすかに聞こえ節子の忌
   花吹雪また花吹雪節子の忌
   水音の空から聞こえ節子の忌
   さくら一枝空き瓶に挿し節子の忌




   
  

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