2016年12月14日水曜日

田尻睦子「倶利迦羅の夜は火をはこぶ ゆりでいよ」(「頂点」242号)・・



新生「頂点」というべきか、発行人・川名つぎお、編集人・森須蘭にほぼ執行部の総入れ替えという感じだったので、いずれ、重鎮の高齢化で行く末を少し案じていたのだが。「頂点」は元をたどれば1959(昭和34)年、杉本雷造、日原大彦らが鈴木六林男を迎え、大阪で創刊された、当時の言葉でいえば、俳句における批評精神の涵養と新しい抒情を標榜した関西前衛派の雑誌であり、小宮山遠、熊谷愛子、白井房雄、八村廣ら、そして多賀芳子、吉田透思朗、岸本マチ子、渋川京子などを擁していた。編集後記によると、代表なき10年を編集実務などのすべてを遂行した日原輝子を、「頂点」名誉会員として遇したとのことである。
ともあれ、以下に一人一句をあげておこう。

  原爆忌が雑踏を歩いている       川名つぎお
  乾杯の声高々と遠花火          尾家國昭
  波音を聴き佇ち尽くし砂になる     石川日出子
  銀寄せに会えず利兵衛で間に合わす 辻本東発
  忘我という部屋月光の燦々と      水口圭子
  人寰に秋の深まる千枚田        岡 典子
  満月へ跳ぶものの影地を這えり    塩谷美津子
  心中の片割れなりし葱坊主       杉田 桂
  曼珠沙華夕べさびしくしたりけり    髙橋保博
  コスモスやモラトリアムの朝が来て  廣田善保
  木枯や都心に眠る古戦場       廣田健司
  利す/のりす/すりるたのしき/しぐれ傘  田尻睦子
  野分晴れ柩のなかは混み合えり   渋川京子
  答えのない問が続き蜜柑むく     成宮 颯
  小春日へダリの時計が流れ出る   森須 蘭
  駅前に捨てられた傘はわたり鳥    楠見 惠
  囀りや窓際に置くマトリョーシカ    渡邉樹音 



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