2017年2月27日月曜日

長谷川櫂「大夕焼沖縄還るところなし」(『沖縄』)・・・



長谷川櫂『沖縄』(青磁社・2015年)。愚生の年代では、沖縄を詠んだ句集といえば、まず沢木欣一の『沖縄吟遊集』(牧羊社・1974年)を思い浮かべる。それは一巻すべてが沖縄滞在時の句で満たされている。その沢木欣一の「あとがき」には、

 種々の意味で沖縄は日本の縮図であり、故郷であるという念を深くした。現地において相当数の句を成したが意に満たず、ほとんど書き下しに近い句集となった。(中略)
沖縄の復帰は実現したが、いろいろ大きな問題をかかえている。。古来人間と自然が一体となって生き抜いて来た沖縄文化の原型、いつまでも生命を維持し、更に発展することを願って止まない。

とある。そのなかの句に、

 赤土(あかんちゃ)に夏草戦闘機の迷彩     欣一
 ことごとく珊瑚砲火に亡びたり
 日盛りのコザ街ガムを踏んづけぬ

この1974(昭和49)年には(前年と後年を合わせると珠玉の句集が多く刊行されている)、例えば、三橋敏雄『真神』、阿部完市『にもつは絵馬』、鷹羽狩行『平遠』、高柳重信『青弥撒』、草間時彦『桜山』、細見綾子『伎芸天』、平井照敏『猫町』、中村苑子『水妖詞館』、飯田龍太『山の木』、赤尾兜子『歳華集』、伊丹三樹彦『仏恋』、山田みずゑ『木語』、宇佐美魚目『秋収冬藏』、石原八束『黒凍みの道』、『定本加藤郁乎句集』、佐藤鬼房『地楡』、鈴木六林男『桜島』など枚挙にいとまがない。もう45年近く前のことだ。
 沢木欣一の句集と比べて長谷川櫂の句集は、その集名に「沖縄」が冠されているとはいえ、沖縄詠で全句を占めているわけではない。櫂の句にならえば、もともと沖縄には還るところなどないのだ。1970年代には、沖縄解放、沖縄独立を叫んだ人たちもいた・・。ともあれ同集からいくつかの句を以下に挙げておこう。

  亡骸や口の中まで青芒        櫂
    飴山實、十三回忌
  飴山忌この世の桜間に合はず    
  軽き身のいよいよ軽し衣がへ
  夢にまた火だるまの馬敗戦忌
  吹きすさぶこともありけり隙間風




               撮影・葛城綾呂↑ヒヨドリ  

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