2017年4月30日日曜日

井口加奈「三寒四温除霊されちゃったパン」(「円錐」第73号)・・



「円錐」第73号は、第一回円錐新鋭作品賞の発表である。応募は一篇35句、およそ半年の募集期間に47編の応募があったという。さほど宣伝もせずの応募数だから意外に多い、という感触だろう(若い人たちにはネット上が効を奏するのかも)。選考委員は澤好摩・髙柳蕗子・山田耕司の三名。作品選考座談会も掲載されている。結果的には、圧倒的な一位推薦者がなく、一人全作の掲載ではなく、応募作の中から20句ずつの掲載、3名ということになっている。花車賞(澤好摩推薦)が谷崎佳奈美(49歳)「目線は高く」、白桃賞(山田耕司推薦)が佐藤文香(31歳)「総国(ふさのくに)」、うずまき賞(髙柳蕗子推薦)が井口可奈(28歳)「プレイステーションの起動音」であった。賞の命名の由来は、「豈」の攝津幸彦記念賞と同じく、故人の同人に因む長岡裕一郎由来の「花車賞」、糸大八由来の「白桃賞」、髙柳蕗子のみ、うずまき魂を宿すという意味で「うずまき賞」という。
 愚生の印象では、佐藤文香はすでに句集もいくつか持ち、立派に俳人として佇っているのだから(すくなくとも新鋭ではない)、今更、賞に応募するなどいうことは止めて、俳人として自身の歩みをわき目もふらず邁進していってほしい、と思う。かつて、高柳重信は津沢マサ子に、「一人前の俳人になるつもりなら投稿などはするな」と言われたと聞いたことがある。津沢マサ子は、以来、句の投稿をすることを止めたとも聞いた。以下に各賞の一人一句を挙げる。
 
   雲梯(くもばしご)山に桜の多きかな   谷崎佳奈美
   あさがほのたゝみ皺はも潦        佐藤文香
   頭痛ばかりの街です春日万灯籠      井口可奈

連載稿では、今泉康弘「諧謔と無ー永田耕衣における禅 第二回」があるが、なかに気にかかったことを一つ書く。それは飯島晴子「悪茄子(わるなすび)爛々とわが翁かな」の句について、

 晴子は「悪茄子」という自ら造った語に、耕衣その人を思い浮かべた。

という部分である。愚生の思い違いかも知れないが、「悪茄子(ワルナスビ)」(別名・鬼茄子)は、植物名であり、棘がやたらとあって、痛くて触われない、秋になると丸い実がなるが毒。愚生の通勤途中の道端にもたくさん生えている。これから、茄子によく似た花が咲く。強いていえば植物季語ではなかろうか。すくなくとも造語ではないように思う(もっとも、晴子の原文にあたっていないので何とも言えないが・・)。



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