2017年6月28日水曜日

鈴木砂紅「三島忌のうどんはおかめがよろしかろ」(『偐紫今様源氏』)・・



 鈴木砂紅第一句集『偐紫今様源氏(にせむらさきいまようげんじ)』(文學の森)、著者「あとがき」には以下のようにあった。

  収録の句は平成十六年から二十七年まで、年代は関係なくテーマ別の五章立てとした。「青丹与志昭和手鑑」は、現代俳句協会年度賞受賞作品賞受賞作「あおによし」を中心に構成。平成から昭和を照射した作品群である。
「黒日傘婦女庭訓」は、自分も含め「おんな」を見据えた作品を多く並べた。 
「紅柄格子独吟句合」は文字通り二句ずつの句合せ。芭蕉や其角には及ばないが、両句の勝敗を楽しみながら読んで頂ければ幸いである。
「金鯰AⅠ艶聞」は平成から未来へのイメージを構成した。「偐紫今様源氏」は『源氏物語』を下敷きにした作品だが、題詠という物語の中を歩きながら作った「吟行句」として読んで頂きたい。 

 つまり、本句集の読み方については著者からの希望が述べられているので、そのように読み、楽しむにしくはないだろう。
 ブログタイトルにした句「三島忌のうどんはおかめうどんがよろしかろ」は冒頭「青丹与志昭和手鑑」の章のものだが、第五章では著者みずからも『源氏物語』を下敷きにしたと述べているように、この句は、明らかに攝津幸彦「三島忌の帽子の中のうどんかな」を下敷きにしたパロディ―であろう。鈴木砂紅には、こうした他の句を下敷きにしたと思われる句が結構ある。他にも、攝津幸彦の「南国の死して御恩のみなみかぜ」を下敷きにした砂紅「母語論語死して呉音のみなみかぜ」、金子兜太「湾曲し火傷し爆心地のマラソン」を、砂紅「湾曲し仮称し僕のへぼきゅうり」などである。
鈴木砂紅にとっては、こうした句のコラージュこそがオリジナルなのかも知れない。
ともあれ、いくつかの句を以下に紹介しておこう。

   春風を着せて黄泉路へ送られよ    砂紅
   竹夫人紅差指はもういらぬ
   八月十五日人さし指が我をさす
   着ぶくれて監視カメラの前に立つ
   偏愛のリカちゃん人形更衣
        (雲隠)
   花いかだ暗渠にのまれつつひかる   
   虫の闇いのちうれしき初音ミク

「いのちうれしき」は大牧広の著書『いのちうれしき』を思いこす。



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