2017年9月13日水曜日

古田嘉彦「『あなたは今天にいる』と聞くのを待つ/・・」(『華茎水盤』)・・



 古田嘉彦詩集『華茎水盤』(思潮社)、著者はかつて古田嘉の筆名で「豈」同人であった時期がある。現在、俳号も古田嘉彦名で、昨夜、訃報の吉村毬子と同じくLOTUS創刊同人である。詞書を付した句は、詩の一行のようであるのも不思議ではない。
例えば(「LOTUS」第36号より)、

     「人の心は何にもまして、とらえがたく病んでいいる。」(エレミア書十七章)可視的になれない。

抑制できぬオーロラ濃度のヤツデ
                                                   
 ブログタイトルにしたのは「『天』-オネゲル交響曲『三つのレ』第一楽章冒頭が聞こえる。」の詩編からである。略歴によると、1993年の第一詩集『水狂い』(土曜美術社)からはじまり、詩学社、思潮社などから多くの詩集など、著書を上梓している。
 ここでは、本詩集の中から一番短い詩篇を挙げされてもらおう。

    チューリップ

チューリップは生死を超えて灯る
染め出る 勝つ
赤い障壁作りに加担して
守る 緩衝しあう
中の空間にある海 彗星 雛鳥を
しかしまもるだけでなく照り出る
ポンポン菊のように守るだけでなく
牡丹のように照り出るだけでなく
秘儀を鍛えて垂直になる
どれ程多くの彗星を失ってきたか
雛鳥を慈しみきれなかったか
色素を整えきれずに叫んでいたか
花弁を空へは連れていけない
しかしチューリップは
放棄された午後の中心にあって
強く訪れるようでありながら
癒す
私を
いつしかチューリップの花弁が絶え間なく
空から降ってくる午後に
私はいる

古田嘉彦(ふるた・よしひこ)1951年、埼玉県生まれ。



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