2017年9月27日水曜日

前田霧人「国会へウスバカゲロウ集合す」(「北の句会」晩夏号)・・



 「北の句会」報告VOL85・86・87号合併号(晩夏号・20178月)、北の句会は「豈」と同様、隔月に開催される句会である。この立派な報告の冊子は丸山巧が編集している。投句は席題1句+自由詠1句の合計2句で、事前投句らしい。欠席投句も認めているらしい。句会への出席者と欠席者合わせて約30名ほど。メンバーをみると「豈」から堀本吟、北村虻曵、岡村知昭、そして大本義幸など。大本義幸は咽頭がんで筆談だと思うが毎回のように出席していたようであるが、さすがに7月の例会は欠席だったらしい。また、本句会報の特徴は欠席投句者の選句評がついているところだろう。その大本義幸のコメントに、

 私事ながら、2月に入院してはじめた抗癌剤投与も3月からは片道2時間の週一回の通院で、ここ半年。手も足もうごかなくなりました。路上転倒六回、今回はお休みさせて下さい。

とあった。大本義幸はこれまでも最初の咽頭がんの大手術以外は、その都度初期段階で乗り越えてきたが、さすがに七度目、肺癌には苦闘しているらしい。先日の愚生への便りでは、6月13日に最後の抗がん剤投与をし、すこし楽になると思っていたらしいが、初めての路上転倒でズボンは裂け、膝の傷は今も残っている。さらに転倒を繰り返した。カリウムが過剰でふらふらになり、プールのなかを歩くよう感じで、右足の指が上らないのに気付いたとあった。結果、義足を使っているともあった。その義足(ギブス)をもうすぐはずせるということだった。
 とにかく、いつも大本義幸は不死鳥のように、その都度よみがえり、彼自身にしかできないような彼らしい句を作り続けているのだ。
 句会報告から参加者のいくつかの句を以下に紹介する(テープは席題)。

  たましいテープ剥がしていく遊び     野間幸恵
  振り向いた仕草がとても金閣寺      岩田多佳子
  芹摘むに膝ついており家滅ぶ       新井君子
  実存を見てきたように蟇         坂本綺羅
  知らぬ地の知らぬ植田も懐かしく     宗本智之
  真夜中の象の向こうに卯波立つ      木村オサム
  祝婚の碧羅天より紙テープ        丸山 巧
  綿毛指す廃墟に蒼き馬の影        浅井廣文
  あやめあやめ盗聴テープが喘ぎ出す    堀信一郎
  お花見をしないと決めた春が行く     原 千代
  神仏に在ったことなし水を打つ      谷川すみれ
  訣れでもゴールでもないガムテープ    大本義幸
  ヒメジョオン貌を得るため夢に飛ぶ    野口 裕
  明易やリサライオンの骨密度       植松七風子
  床の間の糸屑拾う鉄線花         中山登美子
  テープとび切れるラッパをカモメまふ   島 一木
  テープ起こしは不要ですゴキブリ研究会  寺西建舟
  桜吐くハイウエイを吸い込むテープ    堀本 吟
  『芋粥』の朗読テープ夏立ちぬ       三谷白水
  テープに砂しかし明治の海を聞く     泉 史
  桃をんな卑弥呼もももも投げテープ   二宮白桃
  仏法僧寺のあたりをぎゃっと飛ぶ     井上せい子
  水よどむ薄暗がりに杭一つ         北村虻曵 
  昆虫をスライス終わらぬ会議        竹井紫乙
  蝌蚪うごく影は自身を離れゐて       波多野令
  折鶴のうすむらさきへ座りけり        岡村知昭
  九条に傷テープ貼るゴキカブリ       前田霧人   
  



    

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