2017年10月2日月曜日

佐々木六戈「どよめきに彼の人思へしだらでん」(「草藏」第95号)・・


 
 句歌詩帖「草藏」(草人舎)誌は、見事なまでに佐々木六戈の美意識が隅々にまでめぐらされいる。句歌詩帖だから、毎号、佐々木六戈の俳句・短歌・詩が発表され、もちろん同人諸氏も六戈の選を閲して作品が掲載されている。本集の「風人帖(ふうじんてふ)/俳句」の「一人称」36句のなかに、ブログタイトルにした句「どよめきの彼の人思へしだらでん」を見つけたのである。そして、彼の人とは、最晩年の句集『しだらでん』の三橋敏雄に違いないと思ったのである。その集名ともなった三橋敏雄の句は、
  
  みづから遺る石斧石鏃しだらでん    敏雄

である。
 愚生が佐々木六戈と知り合ったのは、彼がまだ創刊からさほど間もない「童子」の編集長時代だ。仁平勝などともに、コラムを連載させてもらったこともある。彼を新宿の宮﨑二健の店「サムライ」で加藤郁乎に紹介した日もあった。その夜、加藤郁乎と佐々木六戈はすぐに意気投合した。
ともあれ、「草藏」本号から句をいくつかと短歌を二首挙げておこう。

  声あれば美声の黴でありにけり     六戈
  回りけり入道雲の裏口へ
  蟷螂の斧青青と使用前
  大夕焼絶筆は斯く暮れながら
  夭き死のかなかなの鳴き交はすさへ

  たくさんの人を屠りて此処に居るこの世のことではなうかのやうに
  非情なる息子にわれは成り果てて母の歌詠む一寸法師




★閑話休題・・

「俳人『九条』の会通信」第20号(俳人「九条」の会事務局)が届いて、去る4月8日に行われた「新緑の集い」の講演録・酒井佐忠「怒りをこめてふり返れ」が載っていた。2014年2月7日に69歳で亡くなった歌人・小高賢の遺歌集『茱萸坂』の短歌と大牧広の俳句について多くを語っていた。「茱萸坂は国会議事堂前の南の下り坂で、デモに参加された方はご存知だと思います」と酒井佐忠は述べていた。
 講演で紹介された作品の中から、それぞれの二首と二句を以下にとどめておきたい。

 沖縄に原発なきはアメリカの基地のあるゆえ・・・みんな知っている 小高 賢
 価値観が戦後ユガンデキタサウダツマリ戦時ガ正シイサウダ

 反骨は死後に褒められ春北風        大牧 広
 夏ひえびえいくさの好きな人が居て
   


  

 

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